スサノオ (1994)

基本
作品名(英) Susanō
作品名(独) Susanō
作品記号  
作品年 1994
ジャンル 舞台
演奏時間  
楽器 noh-player, actress; yokobue, 12-gen koto, perc, elec-sounds
楽譜・譜面

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曲目解説

室町初期(約600年前)、能役者で能作者の世阿弥は、「風姿花伝」、「花鏡」他の、日本で最も著名な能楽の理論書を残したが、そこにある<序破急の原理>は、能楽に限らず、現代にも通ずる日本の芸術の一つの奥義でもある。この深遠な<序破急の原理>を外国語で説明するのは至難であるが、「風姿花伝」の一節に、

『あらゆる物事をつうじて序破急ということがある・・・』

とあり、「花鏡」の一節に、

『ひとさしの舞を、序・破・急という変化の秩序にあてはめるように構成し・・・』

と記述している。

「序破急」とは、単に、楽曲の緩急を示すだけでなしに、作品を形成する全ての要素に網の目のように張り巡らされた原理であり、創造の根本であり、哲学でもある。

私は現代能「スサノオ」の音楽を作曲するにあたり、この古くて新しい世阿弥の序破急の理念を、すべての音(響き)ー、 律(リズム)ー、 構成要素に投射し、現代の鏡に反射させ、そこから新しい調和と合一を得んとした。ここで生じる音響の出来事(Ereignis) は、ミクロ的には増減と複合的な変化をくりかえし、マクロ的には音響の交錯の内に,一つの序破急の<変化の秩序>という大きな空間を描くように意図した。

「スサノウ」の音楽では、日本の伝統楽器である横笛(龍笛、能管、篠笛)、二十絃筝(伝統的な十三絃の筝を約20年前に改良した楽器)、多数の打楽器(竹、木などの打楽器の他に、打楽器奏者山口氏らが開発した特異な音色をもつ鉄製の打楽器:CideloIhos など)、それに、少女たちが手に持って演奏する東南アジアの竹楽器など(Anklung,Bunkaka、ビニール・ホース)が使われている。それに、「スサノオ」の物語に密接な関連のある自然音(風、水、雷の響き、虫の声など)を素材にした「電子音響(electronic sounds)」が交錯する。

この楽器編成でも分かるように、日本の伝統楽器のいくつかが使われているとは言え、ここでは能管以外はすべて、<伝統的な能楽の音楽>とは無縁な楽器編成によっている。そして能管も、能楽の伝統的奏法とは異なる現代的奏法も併用しながら演奏されるが、謡曲を含めて他の楽器も同様に、伝統的な奏法と現代的な奏法を交錯させながら謡(うた)い、演奏する。いわば、この「スサノオ」の音楽的コンセプトには、東西両音楽の<対決(Confrontation)>でも<融合>でもない、日本の伝統的な音楽と西欧的な現代奏法による、<二つの音世界からの創造 (Striding Two Musical Worlds)>がある。

石井眞木, 1994